棚田:島原半島の加津佐
江戸時代から観光地だった棚田
九州は棚田の宝庫だ。それぞれの県で見事な棚田があって、春の水を湛えた中に苗が揃っている場面でも、秋の稲穂がたわわに実っている時でも、それだけを見て歩く友がいるほどだ。千枚田で有名な能登半島の輪島周辺は、その向こうに日本海が見えることで余計にビジュアルな印象を与えるのだろう。もちろん佐賀相知町の蕨野のように山あいの、石垣と色を二分する風景も捨てがたい。ただ、日本で最初に国立公園となった雲仙周辺には、鎖国時代から外国人に愛でられた棚田があった。半島の南西側、加津佐は、欧州からやってきた人には懐かしい風景であったらしい。東シナ海につながる橘湾を臨むように並ぶ穏やかな棚田は、確かに彼らの故郷に似た風情がある。
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