日本にもあった壁に囲まれた自由都市

ヨーロッパの城塞都市や小さな町を訪ねた人なら、日本にはこんなところはない、と言ってしまうかも知れない。イタリアで幾つも体験することであるが、高い塀に囲まれて、中では迷路のような狭い道があり、家々は軒を重ねて、時に階上で橋渡しされている。とはいえ、シエナに見られる地区毎の旗や紋章は、狭い都市の中で自治の苦労を思わずにはいられない。日本にも戦国時代頃には城下は一つのまとまりを見せ、城中心の生活をした時期もある。似た街作りはあったということだろうか。その城塞型の町を今に残すのは、奈良県橿原市の今井寺内町かもしれない。中世の環濠集落を母体とした江戸期の自治都市で、その歴史的な建物が残り、しかもそこで今も普通の暮らしが営まれている。だから、歩けば「普通」だが、町は日本では珍しい。

町並：奈良県橿原市今井寺内町