港の夜景:下北の夜景
蝶の姿が明滅する点描画の世界
港の夜景といえば、函館・横浜・神戸と話題に事欠かない。夕刻から夜半にかけて、無数に点在する灯りの見事さを愛でる人達が、港の背後にある小高い丘や山へ集まってくる。関西に住む私は、比叡山から見る大津の夜景も捨てがたいと思っている。けれども、これまで多くの夜景を見てきたが、下北半島のむつ市は格別の景観だ。青森から電車でむつ市の大湊まで行くと、南が陸奥湾、北西が釜臥山。その釜臥山の背後には恐山があるので、観光客はそちらへ行く。けれども、釜臥山頂付近へ夜の帳が降りてから登れば、絶景が見える。なんと、むつ市がアゲハチョウの形で点滅しているのだ。函館のウエストの利いた夜景の派手さはないが、背後の恐山を想えば、その蝶は誰かの霊を運びにやってきたのか、あるいは連れてきたのか、と吸い込まれる気分だ。
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