滝:鹿児島・犬飼の滝
ナイアガラは毎年移動している
小さき者の力を信じよ、と自然はよく教えてくれる。あの勢いよく流れ落ちてくる滝は、落下の威力で滝壺を作っているだけではない。滝の上部、ちょうど水が落ち始める川底の岩盤は常に水によって浸食され、いつも後退の憂き目をみているのである。ナイアガラは一万二千年かけて十一キロ後退していて、毎年3、5メートル浸食され続けている。華厳の滝もその仕業を滝壺の方へ降りると顕著に見ることができる。鹿児島県で桜島をさしおいて21世紀に残す風景として1位に挙げられた犬飼の滝は、天降川沿いに霧島温泉へ向かう途中に高千穂峰を望むと見えるが、この辺りをその昔、坂本龍馬は新妻おりょうを連れて新婚旅行にやってきた。龍馬が見た時代から百五十年くらいしか経たないが、滝は少々後退して風景は変わったかも知れない。
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