川めぐり:松江の堀川巡り
突っ伏して巡る面白さ
運河クルーズに馴れた人なら、どこを見どころにするかは心得ている。まず橋だ。橋梁の見事さは上からではなく、見上げてこその驚きがある。そして水辺の家屋がいかに川や運河に面した地の利を活かしているか、楽しんでいるかを見ることだろうか。あるいはくねくねした水路で出会う景観の変化だろうか。ヴェネティアのゴンドラは何度も家屋の壁にぶつかりそうになる。ブルージュのクルーズはやや速度が速い。それに較べると柳川の川下りはおっとりしている。私が好きなのは松江の堀川巡りだ。理由は簡単。橋をくぐる場面がどこよりもスリリングだから。一箇所だけだが、とても低い橋をくぐる。舟の屋根を畳み、その下で乗客は突っ伏すように座り、船頭さえ舟に隠れてしまう。そうやって一瞬だが橋を越す。どこよりも神妙になりそうだ。
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