ノズル知識のレベルアップ 【各種性能データ】
ノズル性能を評価するために、圧力−流量特性、圧力−スプレー角度特性、流量分布、水撃力分布、液滴の粒子径などのデータが利用されますが、全てのノズルメーカーがこれらのデータや測定装置を完備しているわけではありません。 また測定装置を所有しているノズルメーカーでも、カタログに記載の規格ノズルを網羅する膨大なデータは常備していないでしょう。その理由はノズルメーカーのカタログには数千、数万種類の規格ノズルがあり、データ作成に膨大な時間と費用がかかるからです。またそれがノズルコストに大きく影響することも考えられます。ほとんどのノズルメーカーは、主に自社の研究開発の目的で測定装置を所有しており、もしユーザーからデータ要求があれば、有償で測定してくれることもあります。
圧力-流量特性データ
| 圧力-スプレー角度特性データ
| 流量密度分布データ
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水撃力分布データ
| 液滴径データ
圧力-流量特性データ
ほとんどのスプレーノズルは圧力の変化に伴って流量も変化します。通常、ノズルメーカーのカタログには圧力値と流量値を対比させて型番表に記載しています。もし記載されていない圧力値での流量値を求める場合は、そのカタログに記載の計算式をご利用になるか、またはそのノズルメーカーへ問合せすることになります。
SGSをご利用になりますと、ノズルメーカーの液体用ノズルの圧力と流量の関係が、デジタルグラフで表示されますので、カタログにない圧力値でも容易に流量値が得られます。
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圧力-スプレー角度特性データ
ほとんどのスプレーノズルは圧力が変化すれば、それに応じてスプレー角度も変化します。ノズルメーカーのカタログには圧力値とスプレー角度値を対比させて型番表に記載しています。もし記載されていない圧力値でのスプレー角度値をお求めになる場合は、そのノズルメーカーへお問合せするほうが良いでしょう。
圧力-スプレー角度特性グラフの例
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流量密度分布データ
スプレーパターンの断面における流量密度のバラツキを表すデータです。流量密度の測定には、ノズルメーカー各社が独自に考案した機器を使用していますが、1例として、右図のごとく容器を床に配置し、下方に一定時間スプレーして溜まった水位を計測する方法があります。
流量密度分布は右図のごとく凹型、凸型、台形分布の3種類に大別されます。分布はスプレーノズルの種類により異なり、また同じスプレーパターンのノズルでもノズルメーカーによって差を生じることがあります。 通常、ノズルメーカーではスプレーノズルの種類ごとに分布を標準化していますが、ユーザーの希望する分布のスプレーノズルの特注に応じてくれる場合もございます。
水撃力分布データ
スプレーが対象物に衝突する力の分布データのことです。ノズルメーカー各社は独自に測定機を考案しており、測定機を所有しているのは世界で数社しかないでしょう。基本的にノズル圧力と水撃力の関係は、同一ノズルではノズル圧力と水撃力は正比例し、異なるスプレーノズルの同一流量条件下では、圧力の平方根(流速)に水撃力は比例します。その理論式を下記します。水撃力と流量が比例関係にあることから、同一ノズルにおいては、流量密度と水撃力の分布は同様の傾向を示します。また水撃力やその分布はスプレーノズルの種類やノズルメーカーで異なり、流量密度分布と同様に基本的に凹型、凸型、台形分布に大別されます。
上記式はスプレーノズルの種類、圧力などにより、実際には補正係数を加える必要があり、また補正係数もスプレーノズルの種類や圧力により大きく変化しますので、ほとんどの場合、水撃力は実測により求めます。
液滴径データ
スプレーされた液体粒子の平均径や粒度分布のデータです。ノズルメーカーのみならず、多くの学術関係者や企業技術者がスプレーノズルに関する実験結果を評価するために不可欠なデータです。(日本液体微粒化学会)
【液滴径の測定方法】
(1)レーザー光線を応用した測定方法 |
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大気中を落下する液滴にレーザー光線を照射し、非接触で高精度に直径を測定する方法です。瞬時に数千個の液滴の直径を計測し、各種平均径や粒度分布を求めることができます。
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(2)CCDカメラとマルチストロボを組み合わせた測定方法 |
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落下する液滴に向けて高性能ストロボをフラッシュさせ、その対抗位置から液滴をCCDカメラで撮影する非接触の測定装置です。モニターで静止状態の液滴を見ることができて、画像解析により平均径や粒度分布を求めることができます。
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(3)顕微鏡で写真撮影する方法 |
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落下する液滴をシリコンオイルの液面に受けて、それを顕微鏡でカメラ撮影する手軽な測定方法です。撮影した写真から粒子の直径をスケールで読み取り、平均径や粒度分布を求めます。 |
【より小さな液滴が必要なら】
スプレーノズルからスプレーされた液滴径は、基本的に次の要因により変化します。
(1)ノズルの種類: |
同一圧力と流量のスプレーノズルでは、フラットタイプよりもフルコーンタイプの方が液滴が小さく、その直径の差は数倍になることもあります。 |
(2)圧 力: |
高圧力ほど液滴は小さくなります。例えば1MPaで液滴径1000μmのスプレーノズルが、10MPaに昇圧すれば数10μmまで微細になることもあります。 |
(3)流 量: |
少流量ほど粒子は小さくなります。例えば、数10ml/minの微少流量ノズルの液滴径が数10μm、同じ圧力で1000
l/minの大流量ノズルでは数1000μmで、その差は数100倍にもなります。 |
(4)流 体: |
液体だけをスプレーする1流体タイプのスプレーノズルよりも、気体と混合してスプレーする2流体タイプのスプレーノズルのほうがはるかに微細な液滴になります。さらに2流体タイプでも気体流量を増やせば粒子径はより微細になります。2流体ノズルの概略の平均径は数10μmです。 |
【液滴平均径の求め方】
液滴の平均径は算術平均やザウター平均と呼ばれるいくつかの計算方法があり、スプレーを利用する目的により使い分けされます。スプレーノズル分野ではほとんどの場合ザウター平均径が使用され、その計算式は【ザウター平均=Σdi³・ni/Σdi²・ni】で、計測した液滴の体積の総和と表面積の総和の比を求めた式です。従って、ザウター平均径のことを体面積平均とも呼び、通常、記号はD32またはSMDを使用します。
【液滴の粒度分布】
スプレーノズルを使用する多くの産業の一部には、液滴径が揃ったスプレーノズルを必要とします。しかしほとんどのスプレーノズルは最大と最少の液滴径に大差があります。ザウター平均の計算式では、採取した数千個の液滴の中に、わずか数個の異常な大粒子の液滴が含まれていれば、それが平均径に大きく影響することになります。従って、粒度分布データを活用すれば最大径付近の粒子数が少なくて、より小さい平均径のスプレーノズルを見つけることができるかもしれません。
(参考)粒度分布グラフの例
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